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宮城教育大学

言葉や情報を届け、
人と繋がる未来について考える

「盲ろう」って聞いたことがありますか?
目と耳に障害がある、ヘレン・ケラーの状態にある方々です。
その盲ろう児への教育や盲ろう者への福祉に長年関わっている先生から、 盲ろうの方々がおかれている状況や、ICT技術の進化について伺ってきました。

コミュニケーションの方法は人それぞれです。
まずはその子と向きあって、楽しい経験をたくさんすることです。

先生の授業・研究について教えてください。

 大学では特別支援教育講座に属し、主に視覚障害に関する授業を担当しています。
 全国には約70校の盲学校があります。宮城教育大学の前は横浜にある唯一の私立の盲学校に勤務していました。視覚障害だけでなく、ほかの障害を合わせ持つ視覚重複障害の子どもたちのいる学校です。そこに20年以上勤務したのですが、うち15年は教育相談の専任で、特に訪問型の相談支援をやっていました。
 横浜に視覚障害乳幼児の保護者の方々が立ち上げた任意の団体があるので、そのサポートに今も通っています。また盲学校の幼稚部だけではなく、他の障害の乳幼児が通う発達支援センターや療育センター等を訪問して、視覚的な支援をしています。盲ろうのお子さんは少ないので、指導方法や具体的な教材を考えるための勉強会を開いたりしています。宮城県立視覚支援学校にも行かせていただき、学齢前の小さなお子さんや保護者への支援をしています。
 また、盲ろうに関しては通訳もしていますし、通訳者を養成する講習会、現任研修会の講師をしています。宮城県内にも『みやぎ盲ろう児・者友の会』があり、盲ろう者や支援者が活動をしています。

盲ろうとはどういう状態なのでしょうか。

 大きく分けると「言葉を理解された上で、視覚的聴覚的に情報が遮断された状態になった方」と「生まれつき盲ろうの方」になります。
 東京大学先端科学技術研究センターの教授として活躍されている福島智さんは前者で、私は大学3年の時に福島さんと出会い、そこから盲ろう福祉に関わるようになりました。福島さんは指点字(盲ろう者の指を点字タイプライターの6つのキーに見立てて、左右の人差し指から薬指までの6指に直接打つ方法)を使って会話をしていますが、その他にも手のひらに文字を書いたり、手話や耳元で大きめの声でゆっくりと反復するなど、盲ろう者が使うコミュニケーション方法はいくつもあります。この方々の通訳をするときは、話している内容だけではなく、相手の表情や相槌なども伝え、その空間を共有し会話に参加できるサポートをする役割です。先天性盲ろうの方は、まずは言葉の概念の学習から関わらなければなりません。
 平成24年に社会福祉法人全国盲ろう者協会が出した数字では、現在全国に約1万4千人の盲ろう者がいます。全国で活動している通訳者は5,000人と言われていますが、「あなたが1ヵ月の間に他人と話したと実感できる日数は何日ですか」というアンケートを取ったところ、多くの方々が月2日以下でした。福祉政策は生活のしやすさを考えてはいるけれど、コミュニケーションの大切さなど、生活の質まで考えるにはまだまだですね。

宮城県ではどうでしょうか。

 東京や横浜なら、視覚障害のお子さんやお母さんたちも比較的集まりやすいのですが、こちらに来て、お子さんが生まれてから数年間、同じ病気のお子さんと会ったことがないお母さんと知り合いました。横浜の集まりに直接参加することは難しかったので、LINEのグループトークに参加していただいたら、1日で5人も同じ病気のお子さんを持つ方と知り合い、「うちの娘も同じだったわよ」という一言でほっとしたそうです。相談できる環境や情報は大事ですね。宮城でも少しずつ、お母さんたちがグループを作る動きがあるので、協力していきたいと思っています。

最近はICT技術が発達していますが、視覚障害のある方々にどのように役立っているのでしょうか。

▲ブレイルメモ(左)、点字タイプライター(右)

 ひと昔前は点字タイプライターに紙を1枚ずつ差し込んで打っていましたが、今は普通のPCに点字編集ソフトをダウンロードして、それを点字プリンターで出力できます。ただ点字は大きさが決まっているため、紙に打ち出すと嵩張ってしまいます。
 私たちのスマホと同じようなものとして「ブレイルメモ」があります。これだと6点で文字入力したものが、紙に打たなくても手前のピンディスプレイで1行ずつ読むことができます。出力や保存もできますし、インターネットに繋がっているのでメールのやり取りや検索もできます。やっとここまで小さくなりました。  また、弱視の方には「UDブラウザ」という無料の教科書・教材閲覧アプリがあります。通常の教科書が見えにくい弱視の子どもたちのためには拡大教科書があります。でも、拡大教科書は大きかったり、重くなったりと持ち運びが大変です。また、読みやすくするために元の教科書とレイアウトを変更している拡大教科書もあります。このUDブラウザを使うと、タブレットの画面でみんなと同じ教科書の文字を大きくして見ることができたり、さらに検索機能や読み上げ機能もあります。「見えない子」は見える範囲が限られている場合があるので、一つの画面で辞書を引くことができると、視線の動きが少なくて効率的に勉強をすることができます。ラインを引いてそのページを保存できるので、後から見直すこともできます。
 教科書だけではなく、自分で作ったデータをPDFにすれば閲覧できます。また、視覚障害だけではなく、発達障害のお子さん達にも活用できますね。

▲UDブラウザ

特にお子さんのことで気になることのある、ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 大丈夫だよ、ということですね。障害をお持ちのお子さんが生まれて、買っていた子育ての本が無駄になっちゃったとおっしゃったお母さんがいましたが、そうではなくて「ここにプラスしていこうね」とお伝えしました。
 視覚障害の、特に成長期の子どもたちは、見えない・見えにくいために人の行動を真似ることが難しいのです。行動を真似たり、悪い意味ではなく人の顔色を見たり、人の反応を伺いながら自分の行動を調節できるというのはとても知的な発達です。視覚的な情報が制限されるため、行動の模倣が難しくなるので、そこはどう行動するかを意図的に伝えて行きましょう。
 また、見る力の成長は8~10歳くらいまでとされています。そのなかでも乳幼児期はとても大切な時期です。その時期にいかに見る力をのばしてあげられるかが大切です。もしもお子さんが、物を見るのに眉間に皺を寄せたり、眩しいところに行くと足がすくんでしまうなどちょっとでも気になることがあったら一緒に考えていきましょう。宮城県立視覚支援学校にご連絡いただければ窓口になりますし、私に連絡をいただいても構いません。
 特に先天性の盲ろうのお子さんに対しては、コミュニケーションの方法は子どもの数だけあると思います。点字や手話を覚えなければコミュニケーションができないと思っている方も多いと思いますが、まずはその子と向き合って、楽しい経験をたくさんすることです。その他者との経験のなかから、何を伝え合いたいのか、どのように伝え合うかがわかり合えてくるので、そういった活動を大事にしていって欲しいですね。


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