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宮城教育大学

自分たちの経験を後世へ、未災の地へ。
防災の知識と経験のある教員を現場に送り出す。

9月1日は「防災の日」。でもその日がなぜ記念日かご存知ですか?
6年半が経って震災の記憶がない、あるいは震災後に生まれた子どもたちのために、ご家庭やお住まいの地域でお子さんと一緒に災害への備えをチェックしてみませんか?

先生だけでなく、お父さんお母さんも防災について真剣に考えていることが伝われば、お子さんたちもその重要性をより理解します。

●先生の授業・研究について教えてください。

 専門は地理学です。地理学はもともと、自然災害なども扱う学問でもあるのですが、東日本大震災が起こるまでは直接的にそれを研究していたわけではありませんでした。震災当時は東京でもの凄い揺れに遭い、いわき市の実家もかなりの被害を受けました。一時的に実家の家族が東京の私のところに避難しましたし、大学もずっと仙台で過ごしたので、津波の被害にかなり衝撃を受けました。
 以来、あの震災で起きたことを調べて発信したり、この経験を広く伝えるなど、地理学研究者として震災と向き合うようになりました。震災が私の研究者としての在りかたを一変させたということですね。

●「防災教育未来づくり総合研究センター」はどのようなことをしているのでしょうか。

 震災での経験を踏まえて、今後起こり得る災害に備え、防災についての知識や能力を身につけた教員を養成することが、宮城教育大学の重要なミッションのひとつです。最初の5年間は被災した学校の学習支援ボランティア活動の調整をしてきましたが、今後は防災の人材育成に力を入れていきます。
 今年の夏休みも、被災地の学校に学生を派遣しました。宮教大にも、被災地に出向いたことのない学生もおります。被災地の近くにいて、その現状を知らないまま教員になることのないよう、実際に復興途上の町の方々や、学校現場の先生方からお話を伺うなどの研修を行っています。将来どこでまた災害に遭うかもわかりませんから、「自分事」として考えて欲しいのです。

●具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。


学習支援ボランティアとして

 ここで蓄積した経験を、よその災害被災地に活かす活動もやっています。昨年4月の熊本地震のあと、学生10名を熊本市と御船町に派遣して、学習支援ボランティアをやりました。ここの学生たちは、恩返しをしたいというとても強い思いを持っているんです。震災当時全国から学習支援に来てくれたボランティアの学生とかかわって、先生を志した学生もいます。
 国内だけでなくネパール地震(2015年4月25日)のあとの現場や、インドネシアのバンダアチェ(スマトラ島沖地震:2004年12月26日)に行き、教育現場での知見を共有したり、仙台でセミナーを開催するということも、少しずつですが始めています。
 被災地にある教員養成大学として、カリキュラムのなかに防災教育を根付かせ、防災についてのマインドを持った学生に、教員として現場に出て貰う仕組みづくりをすることが私たちの目指していることです。宮城県では全国に先駆けて、各学校に防災主任という防災や安全を担当する教員が配置されているので、今後もそういった能力を持つ人材が必要とされると思います。

●最近は地震に限らず、地球規模でも様々な災害が起きています。

 宮教大では震災前から、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が提唱する「持続可能な開発のための教育」(ESD)に力を入れています。自然災害は自然と人間の関わりの問題なので、これは地球の持続可能性の問題にも関わってきます。日本の建物は丈夫で、耐震構造もしっかりしていますが、海外に行くとそういった技術を適用出来ない国もあります。つまり貧困のためハード面にお金をかけられない国もあるわけです。そういう意味で、防災・災害との向き合いかたをもっと視野を広げて考えることも必要かと思います。
 最近の極端な気象も、地球温暖化や気候変動によるものではないかという研究者もいますが、ではそういう気候変動に我々の社会がどう適応していったらいいのか、「災害との向き合いかた」というよりも、今後変化していく「自然との向き合いかた」を多角的に考えることが、この「持続可能な開発のための教育」ということです。
※「持続可能な開発のための教育」(ESD)…環境、貧困、人権、開発といった様々な地球規模の課題について、自分のこととしてとらえ、その解決に向けて自分から行動を起こす力を身につけるための教育。


ネパール地震の被災地の竹で造られた仮設校舎で学ぶ小学生

●9月号が発行される9月1日は「防災の日」です。日頃家庭で心がけておくべき防災対策など、「ままぱれ」読者にアドバイスをお願いします。

 「防災の日」は1923年9月1日に関東大震災が起きた日、「みやぎ県民防災の日」は1978年6月12日の宮城県沖地震、11月5日を国連が「世界津波の日」と定めたのは和歌山県の「稲むらの火」の逸話に由来しています。これを「昔そういうことがあったんだ」で終わらせず、今後災害からの被害を軽減・減災するために、自分に何が出来るのかを考える節目の日にして欲しいと思います。ぜひお子さんたちに、その日に何が起きたかを伝えてあげてください。
 また、今の学校現場は防災教育にかなり力を入れています。そこでお子さんたちがそういう話を持ち帰ってきたら、ぜひ積極的に耳を傾けてることは特にお願いしたいことです。そしてご家庭での備蓄品や、家具の固定などおうちでやるべき基本的な災害への備えが出来ているかどうかを、お子さんと一緒に確認していただきたいです。また、これは年齢にもよりますが、災害が起きた時の集合場所などの家族の約束事を決めるのもいいかと思います。学校の先生だけでなく、お父さんお母さんも積極的に、防災について真剣に捉えていることがお子さんに伝われば、お子さんたちもその重要性をより理解します。
 お住まいになっている地域の自然や歴史から、そこで起こり得る災害の特徴を学ぶことも大切です。住んでいる地域によってがけ崩れとか河川の氾濫とか、起こりやすい、あるいは過去に起きた災害のリスクは異なるので、それを一緒に考えてみるのもいいですね。
 それと合わせて、お年寄りから昔起きた災害の話を聞くのもいいかもしれません。災害は繰り返しやって来るし、その土地の地形などによって傾向がありますので、先人から学ぶということですね。地域によっては、昔起きた災害を記念した石碑などが残っているところもありますし、地名などにも残っているものがあります。「水」「沢」「沼」「田」「堀」などの漢字がその土地の自然環境の特徴を示したりするので、一緒に地図を見てみるのもいいかもしれません。
 最後に強調しておきたいのは、確かに災害は辛く、人々に苦痛をもたらすものです。しかし同時に我々は、豊富な水資源や農作物・海産物など、自然から恵みを受けて日々生活しています。恐怖心だけで防災に取り組むだけでなく、自然環境との関わりかたも考えていって欲しいと思います。


陸前高田市広田半島に立つ明治・昭和三陸地震津波記念碑
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