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宮城教育大学

一人ひとりの子どもに応じた
教育や支援を届けるために

山形の内陸の人は電話で「○○でした。」と名乗ります。本人は無意識なのですが、それも地域の特性なのですね。母国語である日本語をどう使いこなすか、方言を含めて言葉の研究をしている先生にお話をうかがってきました。

自分の気持ちをどう上手く伝え、相手の言葉をどう理解するか。
平たく言うと「コミュニケーション」が国語科が目指すところではないかと思っています。

方言を研究されているそうですが、興味を持ったきっかけは?

 大学の時に約4ヶ月半、語学研修でイギリスに行きました。そこで現地の方々に日本のことを聞かれたのですが、自分が日本のことをあまり知らないことに気づき、もう一度自分の国のことを勉強しなければならないと思ったのがひとつのきっかけです。また山口から宮崎の大学に行って言葉の違いを体感しましたし、当時方言のサークルに入っていたので、大学院から方言の研究を始めました。


研究の内容を教えてください。

 基本的には方言と文法が専門です。いろいろな方言での文法形式の現れ方や、その方言がどういうふうに使われているかの研究です。「写真を撮っている」や「話をしている」の「している」を各地の方言でどう言うのかや、「する」や「した」が実際には「現在」を表しているのか「過去」なのかなど、時間に関することを扱っています。  例えば、友人からメールやLINEで「今、何してました?」と来るのですが、これは「今、何をしているのか」なのか「さっきまで何をしていたのか」と質問しているのか、この「している」の使い方の多様性は特に東北に顕著だと思います。


大学ではどんな授業をされているのですか?

 文法が専門なので、それをどう教えていくかということと、言葉に興味を持ってほしいので、言葉の面白さを伝える授業をやっています。特に小学校の先生を目指している学生には、言葉で遊ぶことを強く推しています。「恋に落ちた時のオノマトペを考えてみよう」とか、辞書によって同じ語に対する語釈が違うという話をして「言葉の辞書を作ってみよう」などですね。できあがったものを見ると、若い世代の考え方もわかり興味深いです。
 私たちが話している日本語は無意識に身に付けてきたもので、その使い方をもう一度考えてみるのが私の授業です。自分の気持ちをどう上手く伝え、相手の言葉をどう理解するか。平たく言うと「コミュニケーション」が国語科が目指すところではないかと思っています。


「災害時コミュニケーション」についても研究されています。

 いわゆる「やさしい日本語」と言われるものです。留学や仕事で日本に在留している外国人が、災害の際に情報弱者にならないよう、わかりやすい言葉を集める活動をしています。東日本大震災で被害に遭った関東近辺の先生方と協力して研究を進めています。日本にいる外国人に調査して、災害に関する言葉の意味が伝わっているのか、どういった言葉に言い換えられるのかを聞き、データベースを作成しています。
 「やさしい日本語」は災害時ということで始まりましたが、今はもっと研究が広がっています。例えば難しい法律の文章などもそうです。困るのは外国人だけでなく、小さい子や何らかの障害を持つ方々という場合もありますからね。


震災の時はもうこちらにおられたのですね?

 東北大学の院生でした。東北大学の東北大学方言研究センターでは、被災地の方言についての本や会話集を作っています。私の在学中は沿岸部の市町村を回って、10分程度自由に話していただいてそれを記録したり、「朝、人に会ったら」など場面を決めて、基礎的な生活に関する言葉をまとめました。ここ2~3年は気仙沼に絞って方言の収集をしています。
 今でこそ方言に対するマイナスイメージはだいぶなくなってきていますが、少し前までは根強く残っていたようです。調査の時に地元の高齢者の方からお聞きしたことですが、10年くらい前は子どもから「孫がいる時は方言を使わないで」と言われたそうです。でも、東北だったら仙台の「いずい」や「はかはかする」のように、共通語には置き換えられない言葉があります。特に身体のことを伝える時に、方言というのは結構重要だと思いますし、弘前大学の医学部では方言の授業があります。共通語を使えるというのは大事なことですが、無理に矯正する必要はないと思います。言葉というのは変わっていくものですし、今の若者言葉も50年後、100年後に日本語として定着しているものもあるかもしれません。


重い障害のある方々とのかかわりの中で使用している教材等

お薦めの小説はありますか?

 作家で読むというより「日本語」と付いていたらとりあえず買う人間なのですが、三浦しをんさんの『舟を編む』は辞書編纂の話なのでお薦めです。どうやって言葉を集めるか、どういう作業をして辞書は編まれているかがわかります。
 絵本なら『スイミー』を描いたレオ・レオニの『じぶんだけのいろ いろいろさがしたカメレオンのはなし』と、『はらぺこあおむし』を描いたエリック・カールの『ごちゃまぜカメレオン』がとても好きです。どちらもカメレオンの話なのですが、真似をしたり、いろいろな色に擬態してみるけれど、最終的には自分の色、カメレオン(自分自身)がいいということに気づく物語です。うちの学生たちにも伝えたいのですが、教師になるためにはいろいろなことを知っておかなければ、ほかと比べることができません。戻る時には自分自身に戻るしかないので、いろいろな人と会ったり経験をしてほしいと思っています。
 小山薫堂さんが描いた『いのちのかぞえかた』は、友人に子どもが生まれたら渡している一冊。「世界に男が○人、女が○人いるとしたら、パパとママが出会ったのはこういう確率だよ」というように、いろいろなことを数字で表している絵本です。親子で読んでもいいし、お母さんが辛い時に読んでもらえたらいいのかなと思います。


ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 小さなお子さんの言葉の間違いは「パパやママがAに対してこう言ったから、Bもそうだろう」と予測して言っていることがあります。そういう時に親御さんは「こういう時はこう言うんだよ」と直すだけでなく、お子さんがなぜ間違ったのかを聞いてあげたり、わからないことがあったら一緒に考えてあげてください。体験してみなければわからないこともありますから、お子さんにはいろいろ学ばせて、できれば一緒に体験していただければと思います。



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