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宮城教育大学

○か×かだけの結論にとらわれず、
その解を導き出す子どもたちの考え方を理解する。

算数・数学は、数式の解き方を覚えてテクニカルに問題を解くものと思っていたけれどそうではないらしい。
「教育」としての算数を研究している先生にお話をうかがってきました。

算数の授業も先生の力量によって決まりますから、先生になってからどれだけ勉強できるかが重要です。

先生の授業・研究について教えてください。

 私の属している数学教育講座には、純粋に「数学」を研究している先生と、私のように「数学教育」を研究している者がいます。私の研究テーマは「乗法概念領域」といって、かけ算やわり算、比例や割合の概念をどう教えていくか、子どもたちがそれをどう学んでいくかを研究しています。文部科学省の調査でも、子どもたちの乗除法や割合の意味の理解には、大きな課題があると言われています。子どもたちが何をどう理解しているのかわからなければ、学習指導の改善もできませんので、それを研究しています。
 大学では、小学校や中高の数学の教師を目指す学生に対する算数や数学の教材研究や教育法の授業を担当しています。ゼミでは「よりよい数学教育を求めて」という広いテーマを設定し、学生各自が問題意識を持ったテーマで研究を進めています。

数学の魅力ってどんなことでしょうか。

 私は大学入学当初、高等学校の教員を目指していたのですが、教育実習に行った高校で指導教官だったのが、一昨年亡くなった田端輝彦先生でした。宮城教育大学に来たのも、先生がここで教えていらしたご縁です。当時先生から数学教育についていろいろ勉強させていただき、小学校の算数教育のほうが純粋に教育としての理想を追究ができると思い、小学校教員の免許を取りました。
 数学の面白さは、一見別々に見えたものが繋がってくる時があることです。例えば分数のわり算は「割る数の分子と分母をひっくり返してかける」のですが、全く別物だと思っていたわり算とかけ算が実は繋がっているとわかった瞬間などですね。新しいことやちょっと難しいことを学ぶことは、丘の上に上がって下を眺めるのと同じで、「地上にいたときはわかりにくいと思っていたこと」が、「ああこんなことだったのか」とすっきりわかり直せることが非常に面白く、それが数学の魅力だと思います。
 また数学は、権威筋から「これが正しいんです」と言われたり、押しつけられたりするものではなく、正しいかどうかを一定の根拠をもとに、自分たちで判断したり、証明することができます。ですから、自分たちでその世界を広げていくことも可能です。それもまた魅力です。

先ほどの「小学校の算数教育のほうが教育としての追求ができる」というのはどういうことですか?

 算数の授業を通して算数の力をつけるのはもちろんなのですが、人格形成を強く意識したいということです。納得のいく理由があれば、自分の間違いを素直に認めて受け入れること、失敗の中から「じゃあどうしたらいいんだろう?」という鍵を見つけ、そこから新たなものを作り出していく力を身に付けることなど、小学校期において非常に大切だと思います。それと同時に、自分たちで合意形成を図ることができます。様々な考えを持ち寄り、根拠をもとにクラスのみんなで考えて答えを導き出していけるので、よりよい人間関係を作っていくことにも寄与できる科目です。今よく言われている「生きる力」や「アクティブラーニング」をずっとやっていたのかもしれませんね。

算数の授業に興味を持たせるために、どんな工夫をしているのですか。

 算数のよさが感じられる問題を、上手く与えられればいいなと思っています。算数というのは、解けた人は頭が良くて、解けない人はダメのような構図になりがちですが、間違った答えを導いた考え方をよく聞いてみると、なるほどそう考えていたのか!ということが結構あるんです。そういう子どもなりの理屈を大切にしながら授業を進めていくことで、少しずつ自分ができるようになっていく、考えを進めていけるという子どもたちの自己肯定感を高めていけば、算数が楽しくなるのではないかと思います。
 算数・数学の臨床的な教育研究は、研究室に籠っているだけではできないので、週末は小中学校の先生方と研究会をやっています。授業のなかで意図的なアプローチを行い、それによって子どもたちがどう変わっていくかなどを話し合っています。本当に教師の力量によって授業が決まりますから、卒業生を中心に、現職教員の育成も力を入れています。先生方も先生になってからどれだけ勉強できるかが重要です。

先生の研究発表で「ジブリ映画『おもひでぽろぽろ』の教材化」というのがありますが。

 山形が舞台の映画『おもひでぽろぽろ』で、主人公のタエ子が小学校の時に、「分数÷分数」のテストができなくて怒られるシーンがあるんです。タエ子は「分数でわることの意味を3分の2個のりんごを4分の1人で分ける」と考え悩むのですが、お姉さんから「そんなことに疑問を持つからできないんだよ。ひっくり返してかければいいって覚えればいいの」と言われてしまうんです。納得するためには意味を考えることが非常に大事なのですが、ややもすれば「こうやるもんだ」「覚えなさい」のようになりがちです。そこで、子どもたちのそういう疑問に向き合うために、この授業を考えました。

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 算数はややもすると、問題が解けた解けないだけで評価しがちで、その価値観がお子さんに伝わると「自分はやっぱり苦手なんだ」と思いこんでしまいます。子どもの躓きを見付けたら、一緒に考えたり、悩んだりして、「確かにそうだね」とか「そこは悩むね」と言ってあげるだけでも、子どもは救われると思います。そこを出発点として、乗り越えて欲しいです。
 生活のなかには算数的にものを考える場面や、楽しく考えられる問題がたくさんあります。例えばお料理のレシピには、「大さじ2分の1杯」という分数が出てきます。「1人分で2分の1杯なら、3人分ならいくつだろう」と子どもと一緒に大さじをもって考えれば、分数のかけ算を学習していなくても、分量を求めることができます。
 低学年のうちは特に、基礎的な練習も大切ですが、楽しく様々な経験をさせ、数や形に対する感覚を豊かにすることも大事にして欲しいなと思います。

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