ままぱれ ママにうれしい身近な情報を毎月お届けします

宮城教育大学

子どもたちの自発的で主体的な生活のうえにある学びについて考える。

今日の晩御飯、その食材がどこから来たものか考えたことがありますか?
タピオカの材料が何かわかってタピっていますか?
そして日本に降る黄砂の原因が実は格安のカシミアのセーター!?
日々の暮らしが実は世界と繋がっていること、考えてみませんか?

私たちが食べている食料のほとんどは海外から輸入しています。身近な食べ物の話題から、農業や食料供給のあり方を理解させる必要があると感じています。

先生の授業・研究について教えてください。

 社会科の教員免許の取得科目として人文地理学、地理誌を担当しています。地理学は簡単に言うと「なぜそこにそういうものがあるのか」という地域性を解明する学問で、地球表面の自然環境を取り扱うのが自然地理学、人文的社会諸現象を扱うのが人文地理学になります。私の専門は後者のなかでも経済地理学で、地域性を作り出している経済的なメカニズムの研究です。「よく潰れるラーメン屋」の立地を解明するのも経済地理学のひとつです。  これまで東北地方や北海道の農業について研究を進めてきました。子どもたちが初めて農業を学ぶのは小学3年生の社会科の授業ですが、小学生に農業を理解させるのはとても難しいです。大学の学生たちもほとんどが農業とは無縁な生活を送っているので、「昨日何を食べたのか」と食べ物からアプローチして、農業や食料について理解してもらっています。


親世代とはライフスタイルも大きく違いますね。

 彼らは生まれた時からコンビニがあるので、食べものがすぐ手に入ります。しかし例えばコンビニの100円のおにぎりの原料がどこから来て、誰が作ったかわからないで消費している恐ろしい社会に突入しています。「国産は安全に違いない」と思って食べている国産のものも、案外多量の農薬が使われていたりします。
 今私たちが食べている食料のほとんどは、海外から輸入しています。ですから授業では生産の話よりも、身近な食べ物の話題から農業や明日も腹いっぱい食べることができるのかといった食料供給のあり方を理解させる必要があると感じています。安さの代償で、大量に食べ物を廃棄していることも知ってほしいですね。


中国内モンゴル自治区ではどういった研究をしているのですか?

 大学の先輩の学位論文のための調査のお手伝いで参加したことがきっかけでした。内モンゴル自治区は現在では漢民族が9割くらいです。共同研究をやった当時のキャッチフレーズは「カシミヤのセーターを買うと黄砂が飛んでくる!?」というものでした。日本に飛んでくる黄砂の供給源はゴビ砂漠などと言われていますが、90年代後半から発生回数が非常に多くなりました。その頃日本では非常に安くカシミヤのセーターが入手できるようになりましたが、その原料の供給地がここでした。中国の経済発展で食料が足りず土地が開墾されることと、たくさん草を食べる山羊の放牧で草原がなくなることが黄砂の原因になっていることを知り、環境問題と経済発展の関係を議論しています。この地域の砂漠化と我々の消費生活が実は密接に繋がっているのです。


農業に携わる人も減っているわけですが、宮城・東北の農業のこれからの課題は。

 東北地方の農業といえばコメの主産地というイメージが強いと思います。ですが、現在の国内のコメはブランドが乱立している状況です。例えば宮城県でも「だて正夢」や「ささ結」など新しい品種が次々と市場に出回っています。このブランド化の乱立は生産者にとってみれば高価格帯を狙うための方法となりますが、消費者にとってみれば食料価格の高騰を意味します。逆に業務用のそこそこ美味しくて低価格のコメが不足している状態です。家計が苦しい消費者にも安定的に供給できる農業のあり方が模索される時期に来ていると思います。  もともと東北の農業は大消費地に食料を供給するために産地を形成してきたのですが、コメばかり作る農業も先が見えてきているので、これからは身近な消費者に農業のことを理解してもらう場面や生産者が消費者の求めるものをうまくキャッチした農業も重要になってくると思います。宮城にはコメ以外の作物があまりありません。県南には亘理のいちごがありますが、県北はほぼコメです。これは昔からのテーマなのですが、複数の選択肢がなければコメが凶作になった時に農家が倒れてしまいます。ですので野菜を作るなどコメ単作からの脱却が必要ですね。コメの生産に関しても技術継承の問題もあるので、農家単位にこだわらないで地域で農地を守っていく発想が必要だと思います。


「持続可能な社会」という授業がありますね。

 「持続可能な開発」は国連が提唱した概念ですが、世界的な潮流からすると環境問題が中心です。2015年に持続可能な開発目標(SDGs)が出て社会問題や経済問題の持続可能性が注目されているので、学生が「持続可能ではなさそうな問題」を各自で課題設定して、調査・プレゼンするというものです。日本は人口減少社会に突入して、これからは停滞あるいは右肩下がりになっていくことを考え、過疎問題や空き家問題、あるいは「B級グルメは地域活性化に繋がるか」などを調べる学生もいます。


ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 子どもはあらゆるものに興味を持って「〇〇ってなあに?」「○○と××は違うの?」という質問を投げかけます。これが何かを学ぶ時の非常に大事な感性となります。それを面倒くさいとは思わず「面白そうだね。やってごらん」と受け止めてあげてください。私もうるさい子どもで、自分で試さないと気が済まない子どもでした。
 何かに興味を持つためには「なぜ○○なのか?」という問いを3回自問することを学生に勧めています。そうやって突き詰めて初めて、調べなければならないと思うんです。学びというものは「一滴の水が大海に注ぐ」ようなものです。幼い頃から「なぜなんだろう?」と些細なことに疑問を持つことが、やがて思わぬ発見や学びとなって自分自身の成長に繋がっていきます。


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